はじめに

FC版DQ2のルール騒動でルールに対しての関心が高まっているように感じられます。
ところで、FC版DQ3の正式ルールは爆弾岩狩のみ状況再現使用可と変わったものになっています。
これに関して良く分からない人が多いと思ったのと、DQ3の事案を知ることでDQ2のルールの妥当性の理解の助けになると感じたので、ここで詳しく解説します。
なお、ここでの主張は私独自のもので、FC版DQRTAコミュの総意では無いことを一応断っておきます。
また、反論等のご意見は歓迎しますのでお気軽にコメント頂ければ幸いです。


状況再現とは

FC版DQ3はリセットボタンを押すことで乱数が初期化されます。乱数は経過時間によって毎回同じように動きますので、全く同じ行動を取ると本来確率で決まるもの(エンカ内容とか)が全く同じものになります。これを状況再現と言います。
ドラクエは運ゲーすぎてつまらないとか言ってる人からすると、とってもありがたい仕様に思われますが、実際はとても迷惑な仕様です。
これが無制限に使用可だと次のようなチャートが主流になります。

エンカする場所が完全に決まっているため、調査してエンカする1歩手前でメニュー画面を開き乱数を動かしてエンカを回避します。それを繰り返す事でノーエンカでダーマまで行きます。そこでエンカ再現をしてメタルスライムを出してレベル上げをしカンダタを倒します。船を取ったらスーに行けるので、エンカ再現をしてはぐれメタルを狩ってレベル上げをします。後は同様にノーエンカでボスまで行ってボスを倒すことを繰り返してエンディングとなります。

このチャートではノーエンカ技をミス無く行う技術が最も重要で、戦闘での対応力の重要性がほとんど無くなります。でもRPGのRTAの醍醐味は後者にあると私は思いますし、見てる方もそこを楽しみにしているんじゃないでしょうか?
運要素もほとんど無くなるため、繰り返しやろうとする人は少ないと思います。よってRTAとしてすぐに廃れると考えられます。
そのため、状況再現をルールで制限することが必要となります。

状況再現禁止ルールをどう作成するか?

そうは言っても、状況再現は勝手に起きてしまう仕様なので、禁止にするのは容易ではありません。でも上記の理由で必要なことなので、そのルールを考えていきたいと思います。
まず、ルールで物理的に状況再現ができないように縛るのは難しいです。リセットしたら勝手に起きることなので、リセット後にコマンド操作をしない時間を1秒以上とか指定する方法が考えられますが、その設定時間の妥当性が難しいですし、指定時間ギリギリで操作した場合のOKかNGの判断が難しく、さらに目押しでやってもある程度状況再現ができてしまうのでダメです。リセット自体を禁止にするのが唯一の解決策でそのルールもアリとは思いますが、DQ3ではバイキル吟味が重要で、それを禁止すると並走や大会で大変なことになってしまう人が出てくるため好ましくないと思います(これはそう考えない人もいると思いますけどね、いろんな人の意見聞いてみたいです)。
※バイキル吟味
魔法使いレベル21からレベルアップ毎に50%の確率で覚え、運が悪いといつまで立っても覚えない。基本的に魔レベ21になるギリギリの経験値状態でセーブをし、1エンカ狩って覚えなかったらリセットすることでこの問題を解決している

そういうわけで、状況再現を規則的に禁止することが必要になります。要するに、できるんだけどやっちゃダメってことです。
それってどうなの???って疑問があると思いますが、こういうルールは決しておかしいものではありません。
例えば、サッカーで手を使っちゃダメなのは当たり前です。ですが、手を後ろで縛るとかして物理的に使えない状況にしているわけではなく、規則的に禁止しているだけです。使おうと思えば使えますが、それでもルールとして十分機能していることが分かります。
でも、上記のサッカーの例では審判や他の人が見ればルール違反だとすぐ見分けられるし、それに対するペナルティも用意されているから問題が起きてないだけじゃん、って反論が考えられますが、まさにその通りだと思います。すなわち、客観的にみてルール違反していることを見分けられるかどうかとそれに対するペナルティが用意されているかが重要になります。

明らかに分かる状況再現とペナルティについて

意味の分からないところで突然リセットしてすぐにはぐれメタルを出したとか、リセットしてからメニュー開きまくってノーエンカで進んだとか、そういう特殊な操作して豪運引いた場合は明らかに状況再現したと分かるでしょう。これは問答無用で告発して問題ありません。
そうなった場合のペナルティですが、DQRTAの場合は不正(他の人を騙してルール違反を行う行為)を行った者に対して、その記録を無効にするだけに留まらず、他の作品も含めたニコ生での全ての記録を無効・抹消した上でニコ生RTA界から永久追放というIOCもビックリのめちゃくちゃ厳しいものになります。まあこれはRTAと見せかけてTASや動画を流したりするとかもっと悪質なものに対する処分で、状況再現してるのに状況再現していないように見せかけた不正に関する処分は前例が無いため実際のところ分かりません。もっと緩いものになるかもしれませんが、それでも相当の処分が下るのは間違いありませんし、その人の信頼性も完全になくなるでしょう。要するにペナルティはめちゃくちゃ厳しいってことは覚えておいてください。


最速入力による状況再現

自然なところでリセットしてそこから最速入力で行動したら簡単に状況再現を起こすことができます。最速入力でもキメラの位置を調整すれば10通り程度のパターンを組むことができ、その中で最良のパターンを選択すれば有利に進めることができます。
パっと見ただけでは最速入力したかどうかが分からないのが問題ですが、どのカセットでも状況再現は同じように起こるので、その人のキメラの位置と合わせて最速入力をし検証すればすぐに分かります。(少なくとも私は、他の人がある程度の記録を出した場合リセットしたところを全部見返して、そこから豪運引いているところがあったら状況再現してないか検証するつもりです)
最速入力の状況再現はそもそも禁止なの???って反論はもちろんあると思いますが、私は禁止にするしかないと思います。
これが許可されてしまうと、パターンをたくさん組んだ人が有利になり、RTAの醍醐味とはずれてしまいますし、一つでも状況再現許可の例外を作ってしまうと、最速入力からのメニュー開きはどうなんだとか最速入力で誤った所にルーラして乱数調整するのはどうなんだとかルールが非常にややこしくなります。
そして、最速入力は検証して分かることで取り締まれます。だからこれは禁止にするべきだと思います。

目押しによる状況再現

これが非常にやっかいな問題です。要するにリセット時から一定時間放置して乱数を進ませ、予め調査して把握した良いパターンの所でスタートし、そこから最速入力をすることで状況再現を起こすって手法です。成功させるのは難しく、私がやったら3割もできる気がしません。ですが、上手い人がやったらもっと成功率高いと思いますし、可能な手法なのは間違い無いです。
状況再現したのか単に偶然豪運引いたかの検証は可能です。その人が何秒放置したかを調べておき、それと同じ時間で何回かやれば同じ状況再現を引くことができます。いくらやっても引けなかったら本当の豪運ということです。
ここで何がやっかいかというと、取り締まりが難しいことです。先ほどの最速入力の場合は、意図的であろうとなかろうと禁止事項なので簡単でした。しかし、一定時間放置してからのスタートはルール的に有効で(これ無効にするのはリセット禁止を意味するw)、それだけでは取り締まることができません。有効なスタートから最速入力するのは当然の手法なので(これが無効だといつまでも最速入力できなくなり、そもそも最速入力の定義とは?になる)、ここでも取り締まることができません。ダメなのはその未来を知っていて状況再現をした場合で、知らなかった場合は(当然)セーフになります。1回見ただけでは知っていたか知らなかったの判断はできません。2回で怪しいなになり、3回以上でこれは知ってるなになります(私感では)。
通常RTAは何回も走るものなので、繰り返していたらそのうちバレると思います。だからギリ取り締まり可能かなと思ってますが、ここは意見が分かれるところだと思います。

意図的ではない状況再現について

ここまで、意図的な状況再現を行う不正に対してどのように取り締まるかを述べてきました。それとは別に、意図してないのに状況再現してしまったケースも考えられます。これは不正ではなく単なるミスです。だからペナルティも異なるものにする必要があると思います。
まず、最速入力による状況再現についてですが、意図的ではない場合豪運を引くパターンと平運以下のパターンに分けられます(意図的だとわざわざ平運以下を引くメリットが無いのでそもそもこのパターンは生じない)。
平運以下の場合は、単に間違えただけで本人に利得は無いため、次から気を付けましょうってことでノーペナで良いと思います。
豪運の場合は、意図的でなくても本人に大きなメリットが得られるため、ノーペナにはできません。記録狙いなら記録の無効、大会ならペナルティでタイム加算が妥当な所だと思います。
次に目押しによる状況再現ですが、これは意図的ではない場合そもそも状況再現ではありません。有効なスタートをして未来が分かっていないんですから。だからここでの問題は意図的ではないと見せかけて意図的に状況再現した場合ですが、これは前述した内容そのままなので省略します。

爆弾岩狩りについて

さて、状況再現に関する問題を一通り説明しましたが、最後に爆弾岩狩りという厄介な問題が残っています。
まず爆弾岩狩りに関して簡単に説明します。

FC版DQ3はカンダタ1と戦う必要が無いため、低レベルでカンダタ2と戦うことができますが、当然それでは勝つことができません。だからレベル上げ(最低僧侶8のルカニ)がどうしても必要になりますが、昔のチャートはピラミッドを低レベで攻略して装備を整えてから無駄にカンダタ1を倒してレベル上げをしていました(ダーマ行ってメタル狩った方が速そうな気するけどダメなのかな?)。そんなところで登場したのが爆弾岩狩りでクリムゾンさんが開発しました。カザーブの東の端でエンカすると、エンカ域の仕様から竜の女王の城周辺のめっちゃ強い敵が出ます。その中に爆弾岩のみというエンカが存在し、こいつは大量にダメージを与えるまでメガンテをして来ず様子を見ているだけなので、毒針でぶっ刺せば安全に倒せて大量の経験値が入ります。しかし、カザーブの東の端まで距離があり、爆弾岩の出現率はそこそこ高いものの他の敵がめっちゃ強すぎて即死級なため大量のリセットが必要になります(突破率は1割くらい?)。経験値の効率だけを考えるとカンダタ1狩りと変わらないかもしれませんが、ピラ前に行うことができるため総合的に見ると断然良いチャートです。そのため、すぐに他のチャートが完全に淘汰されるほどの圧倒的な主流チャートになりました。

ここでの問題は大量のリセットが必要になることです。
状況再現を避けるために、0.1秒~1.0秒まで放置時間を0.1秒刻みで10回リセットしたとしても、11回目のリセの場合はどうしますか?1.1秒待つんですか?50回リセットしたら5秒待つんですか?それだと待つ人とそこまで待たない人で不公平感が大きくなりませんか?そもそも0.1秒刻みって本当にできるんですか?それをどうやって証明しますか?同じエンカが出て来たらどうするんですか?そもそも同じエンカかどうかその場で判断できますか?同じエンカが出るのは特別に許可するとしても、意図的に目押しでぬるいエンカを引き続けるのは許可するんですか?禁止するとしたらどういう基準が考えられますか?
適当に問題点羅列しましたが、非常に悩ましい問題であることは理解して頂けたかと思います。他のところではリセ回数が多くても5回とかなんで、適当にタイミングずらせば問題ありませんでした。繰り返しますが、リセ回数が尋常じゃないところがポイントですね。
これを解決する手段として、爆弾岩狩りにおけるリセットを禁止するのが考えられます。そうすれば状況再現の問題はもちろん完全に回避できます。一発勝負なら事実上爆弾岩狩りは不可能なチャートになります。一方記録狙いではワンチャンかけて爆弾岩狩りするのが必須になると思いますが、これは個人的に好ましくないと思います。ここで1割の運ゲーを通した人じゃないと記録狙いする権利が無く、記録狙いがDQ4の手先もビックリの糞ゲー化してしまうからです(これは異論ある人いるかもしれませんが)。だから、爆弾岩狩り禁止ってルールにする方がベターだと思います。
もう一つの選択肢は、状況再現が避けづらいなら逆に爆弾岩だけ状況再現を許可するという考え方です。状況再現許可なら状況再現の技術による差が如実に出てしまって不都合なように見えますが、waiwaiさんが最速入力をすればノーエンカのまま爆弾岩4という最高のエンカを引けることを発見したため、そこは問題ありません。また、そうすると簡単に爆弾岩が狩れるため、めっちゃ狩りまくって序盤のバランスが崩壊する可能性が危惧されますが、再現できるのは爆弾岩の出現までで狩るところはできずそれなりに時間がかかるので、安定なら3回攻めるなら2回というのが最適なチャートとなり(ちなみに再現無しなら2回の一手)、そこも大丈夫です。

※もし狩るところまでの再現が可能なら?
現行のルールでは、爆弾岩の狩るところまでの再現は実現していないため、それが許可か禁止かは決まっていません。仮にできることが分かったら、その時点でFC版RTAコミュで議論する案件だと思っています。ちなみに私はおそらく禁止側に回ると思います。理由は、序盤のバランスが崩壊してしまうから。爆弾岩がめちゃくちゃ早く狩れるため(極楽鳥より経験値効率良い?)、魔をレベ21ぎりぎり、他3人をレベ15くらいまでここで上げるのが最適なチャートになると思います。そうすると少なくともカンダタまでが完全にヌルゲー化してしまいFC版DQ3のゲーム性が落ちてしまうと予想されるので。(ま、やってみないと分からないけどw)

さて、爆弾岩狩りでの状況再現を許可するルールか、爆弾岩狩り自体を禁止するルールか、どちらでも問題の無いルールだと思います。しかし、実際は状況再現を許可するルールが採用されました。これは何故でしょうか?
理由としては、爆弾岩狩りが発見されてから、問題が表面化しルールが議論されるまでに非常に長い時間がかかったため、その間に爆弾岩狩りをやっているプレーヤーしかいなくなってしまった、だから現行プレーヤーがやっていることを正式なルールとしたってところだと思います。
もしも、爆弾岩狩りが発見された直後に状況再現の問題が表面化していたら、すぐに爆弾岩狩りが禁止されていたと思います。そもそもエンカ域のはみ出しというおそらく開発者が意図していない仕様を利用したのものだし、今まで何の問題も起きてなかったのに状況再現の問題が起きたんだから、って感じです。

少し論理が飛躍しますが、似たようなことがFC版DQ2でも起きたのではないかと感じています。乱数固定技が発見された直後に状況再現の問題が表面化していたら、この新しい技はバグと考えられるものだし無駄に状況再現の問題が起こるから禁止でしょ、ってことになったのではないかということです。実際は乱数固定技がある程度広まってから状況再現の問題が表面化しました。だから乱数固定技でやっているプレーヤーが主流となっていたために、それを許可するルールが優先されたのではないかと思います(乱数固定技許可の状況再現禁止ってルールもアリだとは思いますが)。

おわりに

長文を読んで頂きありがとうございました。
状況再現とは非常に悩ましい存在であり回避することが容易ではないこと、いろいろなルールの可能性があること、ルールは客観的な妥当性だけで決まるものではなくその時のプレーヤーの状況が重要であること、等を理解して頂けたのなら幸いです。

繰り返しになりますが、何かご意見ありましたら是非コメントしてください。